「一万の砲弾が降り注いだ」内戦下のベイルートで、キリスト教民兵組織の支配地域に暮らすアルメニア系の少年バッサームは、半人前のならずもの。「デニーロ」と呼ばれる幼馴染みのジョルジュとつるんで銃を振り回し、カジノから金をくすね、密造酒や麻薬の取引に手を染めています。
バッサームのジョルジュとの再会は皮肉なものでした。母を砲弾で失い、ある嫌疑でリンチにかけられたバッサームが、国外脱出を決意した直前にキリスト教勢力の最高司令官が暗殺され、ジョルジュが彼を逮捕に来るのです。ジョルジュは旧友を見逃してくれるのか、それとも・・。
こういった「ベイルートの悲惨さ」を描いた小説かと思いつつ読み進めると、バッサームがパリに脱出した後の第3部で、趣が変わってきます。ジョルジュが民兵組織で果たしていた役割や、後に行方不明になってしまった理由が明かされてくる「謎解き」要素が入ってくるのです。
2011/11