りぼんの読書ノート

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デニーロ・ゲーム(ラウィ・ハージ)

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「一万の砲弾が降り注いだ」内戦下のベイルートで、キリスト教民兵組織の支配地域に暮らすアルメニア系の少年バッサームは、半人前のならずもの。「デニーロ」と呼ばれる幼馴染みのジョルジュとつるんで銃を振り回し、カジノから金をくすね、密造酒や麻薬の取引に手を染めています。

しかし、ジョルジュが民兵組織に入って実際の戦闘を経験するようになって、次第に2人は疎遠になってしまいます。これまでの「ギャングごっこ」とはレベルが違ってしまったんですね。

バッサームのジョルジュとの再会は皮肉なものでした。母を砲弾で失い、ある嫌疑でリンチにかけられたバッサームが、国外脱出を決意した直前にキリスト教勢力の最高司令官が暗殺され、ジョルジュが彼を逮捕に来るのです。ジョルジュは旧友を見逃してくれるのか、それとも・・。

明日の運命もわからない内戦下の街で暮らす悲惨さ。そこで荒んだ生活をおくり、ならずものに育っていく少年たち。イスラム系住民に報復戦を仕掛けて、暴虐の限りを尽くす民兵組織。

こういった「ベイルートの悲惨さ」を描いた小説かと思いつつ読み進めると、バッサームがパリに脱出した後の第3部で、趣が変わってきます。ジョルジュが民兵組織で果たしていた役割や、後に行方不明になってしまった理由が明かされてくる「謎解き」要素が入ってくるのです。

そして最後に読者は、タイトルの真の意味を知ることになります。「デニーロ・ゲーム」とは、映画「ディア・ハンター」の主演俳優が演じた「ロシアン・ルーレット」のことであったと。

本書は、レバノン内戦下のベイルートで育ち、現在はカナダで執筆活動を行っている作家のデビュー作です。物語の展開にはわかりにくい点がありますが、臨場感に溢れています。

2011/11