りぼんの読書ノート

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ハンガーゲーム0下(スーザン・コリンズ)

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コリオレーナスが教育係を務めた第12地区の少女、ルーシー・グレイはハンガーゲームで最後まで生き残り、勝利者となりました。しかし、歌で人の心を惹きつけることしかできない少女が勝利した背景には、教育係を務めたコリオレーナスの不正があったのです。そして彼の行為はすべて、宿敵の学生部長・ハイボトムに見破られていたのです。アカデミーとハンガーゲームの権威を守るために表沙汰にこそなりませんでしたが、彼に残された道は治安維持部隊に志願することだけでした。

 

将来に絶望しながら任地の第12地区へ向かったコリオレーナスは、ルーシー・グレイと再会を果たします。2人の愛は燃え上がりますが、安維持部隊の隊員と非支配地域の放浪の歌姫の関係など、あってはならないこと。苦しい思いが募るばかり。さらに彼は友人のセジャネスとも再会。地方出身でパネムの冷酷な支配体制に不満を抱いていたセジャネスも、ハンガーゲームの教育係として問題を起こしており、治安維持部隊への志願を余儀なくされていたのです。しかし彼の不満は収まることなく、新たな問題の火種となるのでした。

 

本書は、本編の悪役であったスノー大統領の若き日の物語です。理想と恋に燃える純情な青年が、なぜ冷酷非道な独裁者へと変貌してしまったのでしょう。結局彼はこの体験を通して、人間の本性は暴力的で混沌としており、整然とした支配が必要だという人生観を確立させてしまうのです。第12地区で何が起こったのか。ルーシー・グレイとの関係はどうなってしまったのか。そして彼の亡くなった父親は、ハンガーゲームとどのような関りがあったのか。ついでながら、マネシカケス誕生の謎や、首吊りの木の歌の秘密や、本編のヒロイン・カットニスの名前の意味なども明らかにされます。「エピソードゼロ」にふさわしい内容の作品でした。

 

2021/7