りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

天冥の標6.宿怨 Part 2(小川一水)

イメージ 1

冒頭で、異種族「カルミアン」の正体が明らかにされます。実はミスチフ(オムニフロラ)の宇宙規模の侵略と超新星忌避に早くから気づいて、母性を赤色巨星化しながら超新星化を回避するという超絶技術を有する昆虫系の異星人カンミアだったのです。

太陽系の生命体と協同すべく送り込まれたカンミアの支族は、まずラバーズと、次いでプラクティスと接触を果たしますが、人類とのコミュニケーションに問題があって、超絶テクノロジーをいいように使われてしまうんですね。第1巻で登場した怪物「咀嚼者(フェロシアン)」は、カンミアによる人体改造を受け入れたプラクティスだったようです。

カンミアからもたらされた人体改造、ステルス宇宙船、ウィルス展開技術で武装したプラクティスは、わずか20万人の人口ながら、ついに全太陽系に対して宣戦布告。冥王斑ウィルスキャリアとして差別され続けた500年間の「宿怨」が、ここに爆発したのです。プラクティス側の優勢で戦いは進み、全太陽系が降服しそうになりますが、将来の世襲議長候補であるイサリとミヒルの姉妹の思惑の違いも明らかになってきそうです。

そんな中で、人類初の恒星船ジニ号の出航期日が迫ってくるのですが、ロイズ主要企業のCEOを母に、「医師団(リエゾンドクター)」の父を持つ少年アイネイアは、まだジニ号に到着できないまま。

ところでこれらの動きは、展開体のノルルスカインとミスチフの宇宙的規模の抗争に於いて、どのような位置付けになっているのでしょうか。もともと冥王斑ウィルスはミスチフがもたらしたものであり、太陽系世界の均一化に成功しつつあるロイズもまた、ミスチフの影響下にあったはず。一方で、ドロテアワットから原種ウィルスを持ち出した者はノルルスカインだったし・・。一見したところ錯綜しているのですが、このあたりの関係は、第3巻で明らかになるのでしょう。

2014/12