りぼんの読書ノート

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王妃の帰還(柚木麻子)

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カトリック中高一貫のお嬢様学校で、中等部2年の範子のクラスには、5つの仲良しグループがありました。「お嬢様」の定義から外れている範子は、一番地味なグループに属しているのですが、それなりに平和な日々をすごしていたのです。

ところが、クラスに君臨していた「姫グループ」のトップ美少女の「王妃」こと滝沢さんが、「首飾り事件」ならぬ「腕時計事件」で公開裁判にかけられて地位を失ったことから全てが変わってしまいました。失墜した王妃を押し付けられた「地味グループ」は結束を乱して分裂の危機に。身勝手な王妃を穏便に追い出すには、再び「姫グループ」のトップに返り咲いてもらうしかない!

かくして始まった「王妃帰還作戦」でしたが、ひとたび崩れた秩序はなかなか元に戻らないどころか、事態は暴走しはじめます。気が付けばクラスはバラバラになり、範子は親友を失い、担任教師は処分される寸前に。平穏な日々はもう回復できないのでしょうか。

おもしろかったですね。フランス革命のような目まぐるしい逆転劇が次々と起こるのですが、一連の騒動を通じて少女たちは、自分たちの世界が狭いものであったことに気づいていきます。あの王妃だって、「正論で誰かを打ち負かしても、一人に全部の責任を押し付けても、何も解決しないんだよ」と「臣民」に「許し」を与えるほどに成長するのですから。

ところで、少女たちから憧れられて翻弄される、担任の若い男性教師のイメージは「ピースの綾部さん」だそうです。藤田紀子さんとの噂が出た時に「お母さんの恋人がこの人だったら嫌だな」って思ったという著者による、絶妙の設定だと思います。

2014/11