りぼんの読書ノート

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星々たち(桜木紫乃)

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北の大地で不器用に生きた女・塚本千春の半生を軸にした連作短編集は、「桜木ワールド」全開の作品です。結果を考えずに退路を断ったような生き方も、家族や友人に背を向けて自分のことしか考えられない性格も、決して彼女に幸福をもたらすことはないのですが、それを肯定してしまうのが、この著者なんですね。

別の街で水商売をしている母親・咲子から実家に預けられ、後に捨てられることになる娘・千春。彼女もまた水商売の仕事に就き、結婚したダメ男の実家に娘・やや子を置いて失踪する道を歩んでしまいます。文学に目覚めて書いた生々しい小説が地元紙の文学賞をとったものの、ひき逃げに逢ってしまいます。皮肉なもので、千春の半生を優れた小説に仕立て上げたのは、彼女に興味を持った男性でした。

最終章には千春はもう登場しません。千春のことを知らずに育った娘・やや子は、あるいは幸福で豊かな生活を手に入れることができるのかもしれません。しかし読者には、やや子の中に受け継がれた千春の面影が見えるはずです。そして「消えた星にも、輝き続けた日々があった」というエンディングには、ある種の救いすら感じてしまうのです。

「自分のためにしか生きられないということは、自分の生き方に責任を取るということ」という著者の言葉を体現する主人公たちの生き方の、なんと潔いこと!

2014/11