りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ランチのアッコちゃん(柚木麻子)

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美味しそうな料理を小道具に使って、働く女性たちが一歩を踏み出す姿を描いた連作短編集です。時には主役に、時には端役にまわるアッコちゃんは、芸能界の「ゴッドねえちゃん」クラスの迫力です。

「ランチのアッコちゃん」
恋人に振られた派遣社員の三智子は、有能な女性上司のアッコさんからランチの交換を言い渡されます。1週間、地味な手作り弁当を渡す代わりに、アッコさん行きつけの店で昼食を取れというのですが、それは意外な体験でした。ランチのための「冒険」が、三智子をどんどん変えていきます。

「夜食のアッコちゃん」
会社は倒産。次の派遣先で正社員と派遣社員の間に立って悩んでいた三智子は、「東京ポトフ」を販売するフードトラックに乗っていたアッコさんと再会。1週間アッコを手伝った三智子は、もうひるみません。やはり「体験」は重要なのです。

「夜の大捜査先生」
冴えない合コンの後、盛り場で生徒を補導している教師と再会した野百合。かつては追われる側だった野百合でしたが、恩師に協力して後輩を探すなかで、いろいろなことに気づいていきます。「東京ポトフ」はチラッと登場。やはり感想文を丸写ししてはいけません。

「ゆとりのビアガーデン」
使えない社員だった佐々木玲実は、親しくしていた掃除のおじさん(実はビルオーナー)からビルを相続。おとぎ話のような展開ですが、玲実が始めた屋上のビアガーデンに通うようになった、元の同僚や上司たちの雰囲気が変わっていきます。この作品でも「東京ポトフ」はチラッと登場するだけですが、どうやら三智子はアッコさんと一緒に働くことにしたようです。

当初は8編の予定だったそうですが、この作品に惚れ込んだ出版社がコンパクトな形での出版を希望して4編になったとのこと。ということは、続編もありそうです。伊藤くんA to E本屋さんのダイアナで、二期連続して直木賞候補となった著者の、楽しい作品です。

2014/11