りぼんの読書ノート

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図書室の魔法 上(ジョー・ウォルトン)】

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ファージング3部作の著者による「SF作品」とのことですが、本書のどこがSFなのでしょう。

1979年のイギリスで15歳の少女が綴る日記。読み進めていくうちに、主人公の少女モリは、精神を病む母親リズの虐待から逃れる際の事故で双子の妹モルを亡くし、自分も大けがを負っていたことがわかってきます。その結果、一度も会ったことのない実父に引き取られて、親族の意向で女子寄宿学校に入れられたということも。

お上品な寄宿学校に馴染めないモリでしたが、意外なところから救いがやってきます。初対面の父娘はそろってSFファンだったのです。さらに、寄宿学校の図書室司書キャロルや、公立図書館の司書グレッグと知り合い、読書クラブに参加して思う存分にSFを語り合う至福の時が訪れるのですが・・。

実はモリは「見える」少女でした。フェアリーたちを見ることができ、魔法の存在を信じ、「魔女」である母親から身を隠す術を施し、魔法の不確かな因果則について重ねる思索は、彼女をどこに連れていくのでしょうか。そして母親との間に何があったのか、母親と対決する日がやってくるのか、すべては下巻で明らかになるのでしょう。

本書の冒頭には「世界中の図書館司書に捧げられた賛辞」とともに、「この本で書かれるすべての出来事は虚構」だという文章があります。「ウェールズの丘陵地帯も、炭鉱も、赤い乗合バスなどは存在していない。1979年という年も、15歳という年齢も、地球と呼ばれる惑星も空想の産物にすぎない。ただし、妖精はちゃんと実在する」のだそうです。1964年生まれの著者は、この年にこの年齢だったのですね。

2014/11