りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

図書室の魔法 下(ジョー・ウォルトン)

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狂った魔女である母親との対決の結果、双子の妹モルを失い自身も大けがを負った15歳の少女モリ。会ったこともなかった父親に引き取られてウェールズからイングランドに移り、3人の伯母たちによって全寮制の学校に入れられたモリの救いは、SFとファンタジー。しかも彼女は「妖精が見える」少女だったのです。

日記形式で綴られていく少女の思いは、彼女の理解者と思しき祖父への思い、伯母たちとの対決、16歳の誕生日に独立する夢想、読書クラブのカッコいい少年とのデート、そして読書、読書、読書・・。やがて、母親と再び対決する日がやってきます。『指輪物語』を武器にする母親に対して、一歩も引かずに戦うモリだったのですが・・。

いったい、この本は何を意味しているのでしょうか。少女の成長物語であることには間違いないのですが、彼女を成長させたものは何だったのか。本書のタイトルが『Among Others』であることを、ここで思い出すべきかもしれません。魔法や妖精は、モリが他者(すなわち社会)と対峙して折り合いをつけていくための武器であり、日記の内容(すなわちモリの内面)を守るために必要としたアイテムだったと理解することも可能なのです。

モリは「信用ならざる語り手」なのかもしれませんし、そもそも日記の中では、モルとモリが入れ替わっているようなフシもあるのです。しかし、母親が「世界を滅ぼそうとした魔女」なのか、「精神を病んで娘たちを虐待した女」なのか、という根本問題を含めて、そんなことは「どうでもいいこと」なのかもしれません。パイの物語のように、「読みたい読み方」をすればいいのでしょう。彼女を成長させたものは、間違いなく本書に記されているのですから。

巻末に記された、本書に登場するSF/ファンタジー小説の膨大なリストは、1979年という時代を感じさせてくれます。読んだことがある作品は、20%くらいでしょうか。奥の深い世界です。

2014/11