りぼんの読書ノート

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プロジェクトぴあの(山本弘)

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「ぴあの」・・「ピアノドライブ」・・聞き覚えのある言葉だと思ったら、本書は地球移動作戦の前日譚だったのですね。

超光速で運動する粒子タキオンの実用化に成功し、外宇宙航行船や永久機関を生み出した超天才は、アイドルグループの少女「結城ぴあの」だったのです。それだけでなく、三次元映像の人工意識コンパニオン(ACOM)の誕生にも、彼女は関わっていたのです。

同様に本書は、「変なヒロイン好き」である著者が以前に生み出した、アイ、詩羽、一条(仮名)、魅波、千里らの延長線上にある物語でもあります。個の力で世界を変えてしまうには、ほとんどミュータントでなくてはならないのですが、もちろん「ぴあの」も例外ではありません。

彼女はまるで、普通の意味での人間の心を持っていないようです。もっとも、物語の中盤で「メカぴあの」とアイドル対決をする「ぴあの」は、生身の人間の素晴らしさを、いかんなく発揮するのですけどね。語り手の「すばる」が「男の娘」であるのは、「ぴあの」とのバランスを考えてのことのようです。

前日譚なので、結論はわかっているのですが、「アイドル好きなSFおじさん」が生み出した、楽しい物語です。

2015/4