りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2014/11 図書室の魔法(ジョー・ウォルトン)

「読書が絡む成長物語」は大好きなのです。「15歳という年齢など空想の産物だが、妖精は実在する」というお茶目な前書きから始まる不思議な物語は、想像力を思いっきり刺激してくれました。そういえば、ユゴーは12歳の少年ですし、「王妃」のクラスメートたちは14歳でした。10代前半の少年少女たちの成長物語は、フレッシュです。
1.図書室の魔法(ジョー・ウォルトン)上巻下巻
1979年のイギリス。精神を病む母親の虐待から逃れる際の事故で双子の妹を亡くし、自分も大けがを負った15歳の少女モリ。強引に入れさせられた寄宿学校に馴染めないモリの救いはSF小説と読書クラブでした・・。モリは妖精を見ることができるのか。母親は魔女なのか。そもそも少女はモリなのか。不思議で奥の深い「少女の成長物語」です。

2.コレリ大尉のマンドリン(ルイ・ド・ベルニエール)
牧歌的なギリシャの島を舞台にした不思議な交流と歴史的な悲劇。激動時の時代をたくましく生き抜く女性たち。半世紀後に結実した不思議な恋愛。いろいろな要素を織り込んだ小説は、脱線も空中分解もせずに、素晴らしい「人間賛歌」になりました。ある意味で、奇跡の小説です。ギリシャマンドリン(ブズーキ)の音楽を聴きながらお読みください。

3.ユゴーの不思議な発明(ブライアン・セルズニック)
亡き父が遺した機械人形の修復を心の支えにして、パリの駅の時計台に隠れ住む孤児の少年が起こした奇跡。過去を封印したまま年老いていった元映画監督の老人の心を再び開くためには、何が必要だったのでしょう。映画に対する愛情をテーマとして、何ページもの挿画を含む本書は、まるでそれ自体が映画のようです。マーティン・スコセッシ監督によって映画化されました。

4.王妃の帰還(柚木麻子)
今月3冊読んだ柚木さんの作品からも1冊。クラスに君臨していた「姫グループ」のトップ美少女の「王妃」が失墜。身勝手な王妃を押し付けられて結束を乱した「地味グループ」に平和を取り戻すには、王妃に再びトップに返り咲いてもらうしかない! しかし事態は暴走し、クラス内の力関係もフランス革命のように二転三転。それでも少女たちは、一連の騒動を通じて、自分たちの世界が狭いものであったことに気づいていくのです。楽しい小説でした。諸々の設定も絶妙です。


2014/11/29