りぼんの読書ノート

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旅猫リポート(有川浩)

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有川さんバージョンのティンブクトゥでしょうか。ポール・オースターの作品では、主人公は犬でしたけどね。

大怪我をした際に救ってもらって以来、サトルの相棒ネコとなったナナは、サトルと一緒に旅に出ます。それはサトルにとって、懐かしい人々を訪ね歩く旅であっただけではなく、もうひとつ別の目的があったのです。

小学生のときに一緒に捨てネコを拾った幼馴染のコースケ。両親の離婚を乗り越えて農業家となった中学時代の親友ヨシミネ。高校・大学の同級生同士で結婚して、富士山の麓でペンションを営んでいる友人カップルのスギとチカコ。2人の飼犬トラマルと飼猫モモ。そして小学6年の時に両親を失ったサトルを引き取って育ててくれた若い叔母のノリコ。実は彼女は大のネコ嫌いです。

サトルの「もうひとつの目的」とは何だったのか。1人と1匹の関係はどうなってしまうのか。人語を解するネコであるナナを語り手として、時の経過とともに変わるもの、変わらないものについての思いを綴った作品です。ただし、オースターさんの作品にあった「愛情の分割可能性への問いかけ」のような、重いテーマは含まれていません。

2014/11