りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

たんぽぽ娘(ロバート・F・ヤング)

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河出書房新社奇想コレクション(全20巻)の最後を飾ったのは、SF的なガジェットを用いながらロマンティック愛を綴る作家でした。表題作の「たんぽぽ娘」は、最近ビブリア古書堂の事件手帖で紹介されて話題になりました。

特別急行がおくれた日」 2つの駅の間を繰り返し往復する特急列車。運転手が心を寄せる切符売りの少女と結ばれる日は訪れることはなく、事故で亡くなった乗務員も翌日復活。この列車の正体は何なのでしょう?

「河を下る旅」 自殺を試みて死にゆく男が最後に思い浮かべたのは、河を下って滝に落ちていくイメージでした。ところがそこに、自分も自殺中だという若い女性が現れます。恋に落ちた2人はやり直すことができるのでしょうか。

「エミリーと不滅の詩人たち」 博物館のリニューアルで、アンドロイド詩人たちはお払い箱。詩人たちを愛する司書のエミリーが考え出した、詩人たちを復活させる案が見事です。

「神風」 反物質爆弾を積んだ有人ミサイルで敵陣への突入を命じられた兵士。敵によって隣の座席に送り込まれたのは人間爆弾である女性。短い間に女性と心を交わした兵士は意外な行動にでるのです。

たんぽぽ娘 「おとといは兎を見たわ。きのうは鹿。今日はあなた」とつぶやく未来から訪れた娘に恋した男。2人の恋は成就するのでしょうか。普通の人生こそタイムマシンなのですね。美しい物語です。

「荒寥の地より」 この作品もほのぼのとするタイムマシンものです。家族愛と隣人愛が、時を越えて響き合います。この時代は『怒りの葡萄』のころのようですが、未来社会はもっと荒涼としているのでしょうか。

「主従問題」 村人をシリウスに移住させたのは、犬の姿をとる知的生命体でした。彼らは園丁を必要としていたのですが、人間に気持ちよく働いてもらうには、地球の犬のようにふるまうことが大切なのです。

「第一次火星ミッション」 手作りのロケットで火星に行ってプリンセスと出会った記憶は、少年時代の読書体験にすぎないのでしょうか。夢を実現させて火星に降り立った宇宙飛行士が火星で見つけたものとは・・。

「失われし時のかたみ」 過去がぎっしり詰まった部屋から出る方法はひとつだけ。これは怖いですね。

「最後の地球人、愛を求めて彷徨す」 自分以外は皆、異星人に身体をのっとられてしまったというのはアル中の錯乱妄想にすぎないのでしょうか?

「11世紀エネルギー補給ステーションのロマンス」 タイムトラベラーの緊急避難先として設置されている滞時間流エネルギー補給機の漏洩事故は、お城の時間を止めてしまっていました。これは「いばら姫」伝説となる物語だったのです。

「スターファインダー」 宇宙くじらの死骸を利用して時間旅行が可能となっている時代は、女性が男性を支配する社会になっていました。孤独な男性技術者が、くじらとともに脱出をはかります。

「ジャンヌの弓」 軍によって征服される寸前の惑星を救ったのは、白馬にまたがるジャンヌでした。軍の司令官は、ジャンヌを捕えるために青年を送り込むのですが・・。もちろんハッピーエンドが待っています。それにしても「思念創造」によって作られた矢はパワフルです。戦闘だけでなく、恋だって射止めてしまうのですから。

2014/5