りぼんの読書ノート

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火星の挽歌 - タイム・オデッセイ3(アーサー・C・クラーク/スティーブン・バクスター)

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クラークさんの遺作となった「タイム・オデッセイ3部作」の最終巻になります。

人類抹殺を決意したとおぼしき宇宙種族「ファーストボーン」が起こした太陽嵐を宇宙空間に建設した巨大な盾によって生き延びたものの、27年後の2069年、新たな攻撃が仕掛けられます。「ミニ・ビッグバン」を起こす宇宙論的兵器が地球を目指して進んでいることが観測されたというのです。

宇宙評議会議長ベラ・フィンガルと火星で太陽嵐を生き延びたボブ・バクストンはQ爆弾と名づけられた兵器に攻撃を仕掛けますが、効果はありません。そんな中、前2巻のヒロインだった元英国陸軍兵士のビセサは、娘マイラによって19年間の冷凍睡眠から覚醒させられて火星へと向かいます。

そこでビセサを待っていたのは、かつて太陽嵐を防いだ人工知能のアテナでした。旧火星人が重力の檻で捉えたファーストボーンの「眼」と対面させられたビセサは、再び「寄せ集めの地球」ミールに送り込まれてしまいますが、ミールが漂う宇宙の余命は500年程度と観測され、夜空には水色の火星や金星が輝いていたのです。

最終巻では、謎に満ちていたファーストボーンの行動原理が推測されます。彼らの目的は、宇宙が平衡状態に達するまでの時間を極限まで長引かせることであり、彼らが許容できないのは、つまらない文明によるエネルギーの浪費なのではないかと。一方で「おもちゃ宇宙」を作ってサンプルを残すのは、生命を尊びつつも滅亡させるファーストボーンの懺悔なのではないかと・・。

ビセサらの行動は人類を救えるのでしょうか。そして人類とファーストボーンは共存できるのでしょうか。本書はクラークさんの遺作となりましたが、その結論は出ないままだったようです。最後にビセサが出合った「ラストボーン」種族がかかわるであろう「壮大な続編」は、バクスターさんに受け継がれていくのでしょうか。

2012/3