りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

妻が椎茸だったころ(中島京子)

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2013年度の「日本タイトルだけ大賞」に耀いた作品です。梨木香歩さんの小説を思わせる雰囲気のタイトルですが、全く内容の想像がつかないところが凄い。「思いがけない人生の側面」を切り取った、5つの短編からなっています。

「リズ・イェセンスカのゆるされざる新鮮な出会い」
アメリカに語学留学していた際に、雪によってバスが欠便した際に好意で泊めてくれたおばあさんは、過去の5人の結婚相手について熱心に話してくれたようなのです。英語が苦手だった左知枝は、よく理解できなかったのですが、6年後にCNNが報道していたのは、焼け跡から発掘された・・。「flesh」と「fresh」を聞き分けられなかったことは幸運だったりして。

ラフレシアナ」
人付き合いが苦手そうな青年から、出張中の食虫植物の世話を頼まれた亜矢は、その青年が付き合い始めた品のない女性のことが、巨大な食虫植物に見えてしまいます。でも亜矢にも秘密があったのです。

「妻が椎茸だったころ」
急死した妻が応募していた料理教室に、代わりに行くよう娘から指示された60歳の泰平。妻のレシピノートには日々の感想や思いも記されていました。「私が椎茸だったころ」という一文に心惹かれた泰平は、料理の先生の前でふと口にしてしまいます。先生はジュンサイだったことがあるようです。料理とはそういうものなのです。

「蔵篠猿宿パラサイト」
女友達どうしで卒業旅行に訪れた蔵篠温泉の『猿の宿』で出会った奇妙な男は、その地で発見されたパラサイト隕石に関わる不思議な話を披露します。隕石で死んだのは猿なのか、人間なのか。パラサイトとは何を意味しているのか。「アウター・リミッツ」のような物語ですね。

ハクビシンを飼う」
一人暮らしのまま亡くなった伯母の家の手入れにでかけた沙耶は、伯母と一緒に暮らしていたヨシノブさんの「甥のようなもの」という青年と出会います。2人は、屋根裏に入り込んだハクビシンをきっかけに付き合い始めたというのですが・・。伯母さんが一緒に住んでいたのは誰だったのでしょう。そしてこの青年は何者なのだったのでしょう。それとも全ては夢の中のこと?

2014/5