りぼんの読書ノート

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からくり乱れ蝶(諸田玲子)

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清水次郎長に関連する小説を数冊著している諸田さんは、次郎長が養女とした姪の4代目の子孫にあたるそうです。次郎長は初代と二代目の妻に先立たれたため、生涯で3人の妻を娶っていますが、よほど初めの妻だった「お蝶」を愛していたのでしょう。3人とも「お蝶」と名乗らせています。

本書の主人公は「2代目お蝶」です。清水一家の草創期を支え続けて子分たちからも慕われた「初代」と、明治維新後に次郎長を町の名士とすることに貢献した「3代目」は有名ですが、「2代目お蝶」は影が薄い。諸田さんは本書で、出自も不明という彼女の人生を「創作」していきます。

幕末期。甲斐の侠客・竹居の吃安の娘お冴えは、売り出し中の若親分・黒駒勝蔵に思いを寄せていました。しかし、ライバルに嵌められた吃安が獄死して一家は離散。女壺振りの「お駒」へと身を変えたお冴えは、次郎長と抗争を続ける勝蔵を助けるために、次郎長に近づきます。次郎長に惚れ込まれて後添いとなった後も、零落した勝蔵に思いを寄せていたようなのですが、皮肉なもので勝蔵の卑劣さに愛想を尽かした途端、自ら招いたような悲劇に襲われてしまいます。

これは驚きますね。次郎長はお冴えの過去を、お冴えは次郎長が親の仇であることを知らずに結婚したというのですから。それだけではありません。著者は、新徴組藩士に斬殺されたというお冴えの死の真相を、おぞましい陰謀として描いています。そして次郎長は、そのことを生涯悔い続けたと・・。

諸田さんが現在、日経新聞に連載している『波止場浪漫』は、諸田さんとは血縁関係のないほうの次郎長の養女おけんの物語。出版されたら読んでみましょう。

2014/5