りぼんの読書ノート

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あきない世傳 金と銀 3(高田郁)

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高価なモノが売れなくなった享保デフレ期。しかしこの時代には、明治以降の日本を支えていく大商人が育っていたのです。石田梅岩が商家の理念を肯定した「心学」を打ち出したのも、この時代でした。このシリーズは、傾きかけた大坂天満の呉服商「五鈴屋」を舞台にして、一介の奉公人から商家を再興する女性・幸(さち)の成長を描いていく物語です。

聡明さを買われて店主・四代目徳兵衛の後添いに迎えられたものの、夫は放蕩三昧の末に急死。四代目の弟の惣次が、17歳で寡婦になっていた幸を娶ることを条件に五代目を継ぐと宣言したところから、第3巻が始まります。もちろん幸には発言権などありません。商才がある惣次を支えて、幸の活躍が始まるかと思えたのですが・・。

やる気満々の惣次は、ビジネスモデルの変革に乗り出します。年末1回の節季払いを、年5回の支払いに変更して金利分を値下げ。番頭たちにも売り上げのノルマを課して業績アップ。さりげない幸の助言を入れて読本に宣伝を印刷させたり、屋号を入れた傘をノベルティとしたりの手段も成功。さらには、5年後に江戸店を出すという大目標を立てて、新規仕入れ先の探索に乗り出します。

しかし惣次には、商売人としての器量や人情が欠けていたのでした。次々とアイデアを出す妻に嫉妬心を抱いたのはまだしも、己の利益のみを優先してばかりではいけませんね。女名前での商売が禁じられている大坂で、知恵を武器にして「商い戦国時代」を渡ってゆく幸の運命は、まだまだ激変していきそうです。

2018/3