りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

君の彼方、見えない星(ケイティ・カーン)

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映画「ゼロ・グラビティ」を彷彿とさせるような小説です。小天体の衝突でシャトルから放り出された、女性宇宙飛行士のカリスと料理人のマックスに残された酸素は、わずか90分。恋人同士である2人は、互いを思いやりながら、絶望的な状況からの脱出をはかるのですが・・。

「現在」の苦境の合間に、「過去」の物語が挿入されていきます。核戦争を経験し、小惑星に囲まれてしまった地球では、残された人々が理想郷を築こうとしていました。しかしそれは、再び過ちを起こすことがないように厳格なルールに支配された世界になっているようです。そのひとつが35歳までは結婚を認められないというものだったのですが、ともに25歳の2人は、なぜ一緒のシャトルで宇宙空間へと出ることになったのか。重要な伏線なのですが、このあたりはリアリティが薄いですね。

本書のハイライトは、オープン・エンディングともいうべきラストシーンでしょう。カリスだけが生き延びた未来。マックスだけが生き延びた未来。そして2人とも漆黒の宇宙空間でゆっくりと意識を失っていく未来。しかしこの2人には、別の未来もありえるように思えてなりません。まだ若い著者は、ワーナーブラザーズに勤務しており、本書の映画化も進行中だとのこと。未来社会の設定に説得力を持たせないと、映画もヒットしないように思えるのですが・・。

2018/3