りぼんの読書ノート

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大聖堂-果てしなき世界 下(ケン・フォレット)

フィレンツェで革新的な技術を身に着けたマーティンは、建築家として成功し結婚もしていましたが、ペストによって家族も仕事も失ってしまいます。彼自身もペストに罹ったものの生き延び、幼い娘を連れてキングスブリッジへと帰還。しかしそこでもペストは猛威を振るっており、町は壊滅状態となっていたのです。

 

女子修道院の施療所で実績をあげていたカリスは、ペストで亡くなった女子修道院長の後任に指名されます。患者の世話に翻弄されるなかで、彼女は清潔・隔離・マスクの重要性を学びます。進歩的なカリスを妨害し続けてきた修道院長のゴドウィンは財産を持って逃亡しますが、ついにペストに追いつかれてしまいました。公平なアンリ司教の後押しを得て様々な改革を行い、マーティンと共に老朽化した大聖堂の塔を修復する計画を立てたカリスですが、事態はそう簡単には進みません。改革派の足を引っ張る保守派や陰謀家はいくらでも湧いてくるのです。

 

英国皇太子の覚えめでたいラルフは、ペストで空白となったシャーリング伯爵の地位を狙います。そのためには寡婦となったフィリッパとの結婚が必須なのですが、彼には領主となった際に迎えた幼い妻がいました。しかし野心を抑えきれないラルフは、ついに一線を超える悪事に手を染めてしまいます。彼にはどのような報いが待っているのでしょう。多くの農民を失った村で、ついにグウェンダとウルフリックは土地を得ますが、彼らの運命はラルフと強く結びついているようです。グウェンダの息子の父親はラルフだったのですが・・。

 

そして冒頭に登場した騎士の秘密が明かされ、物語は大団円へと向かいます。長い回り道の末にカリスとマーティンは結ばれるのでしょうか。大聖堂の塔を英国で最も高い塔へと作り変えるという、マーティンの野心は実現するのでしょうか。どん底の暮らしから抜け出すためにもがき続けたグウェンダに、平安の時は訪れるのでしょうか。波乱万丈の物語ですが、中世に生きた人々の暮らしが丹念に描かれているために、最後までリアリティを失いません。本書を読んでいた6日間、イングランド中世社会という沼にどっぷりとはまり込んでしまいました。順番が逆になりますが、次はシリーズ第1作の『大聖堂』を再読してみようと思います。

 

2022/8