りぼんの読書ノート

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あきない世傳 金と銀7 碧流篇(高田郁)

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大坂天満の呉服商「五鈴屋」の6代目店主であった夫の友蔵の死後、「1年限り」の7代目店主となった幸は、亡父との約束であった江戸に念願の店を出しました。大阪と江戸の相違に戸惑う幸たち主従が、店是である「買うての幸い、売っての幸せ」の基本を揺るがすことなく、複眼的な視点を生かして商売に結びつけていく過程がいいですね。

 

知恵を絞って時世を読む「鶚の目」と身近なものを観察する「蟻の眼」、さらに顧客のために始めた帯締めの講習会から、武士の都である江戸では商人の都である大阪と異なって地味な柄が好まれること、度重なる禁制と人々の志向の矛盾に商機が潜んでいることなどを理解していくのです。そして、戯作者を目指していた頃の亡夫の旧友であった歌舞伎役者の富五郎や、以前は染物師であった力造とお才さん夫婦との出会いが、新しいビジネスを生み出していきそうです。

 

もちろん、現代にも通用するビジネス指南書的な側面ばかりではありません。ようやく江戸に呼ぶことができた妹の結と賢輔の恋の行方はどうなるのか。やはり幸は1年で店主を退かなくてはならないのか。8代目店主をどのように決めていくのか。そして物語からは姿を消したはずの意外な人物の再登場など、読み物としておの面白さも優れているのです。もう第9巻まで発行されているのですが、なかなか図書館の順番が回ってこない人気シリーズです。

 

2020/12