人間と動物との接点をテーマとする短編小説集を著した理由は、「自分の小説では動物が重要な役割をはたしていると気づいた」からだそうです。そういえば『ミーナの行進』ではコビトカバのぽち子、『猫を抱いて象と泳ぐ』では象のインディラ、『最果てアーケード』では老犬のベベなども、存在感がありますね。
「帯同馬」
モノレールの沿線にあるスーパーばかりを巡って食品の実演販売をしている女性は、旅を恐れています。フランスの凱旋門賞レースに向かうディープインパクトを安心させる目的で旅に帯同する馬がいると聞いて、モノレールの終点が海外に繋がっていることを意識するのですが・・。
モノレールの沿線にあるスーパーばかりを巡って食品の実演販売をしている女性は、旅を恐れています。フランスの凱旋門賞レースに向かうディープインパクトを安心させる目的で旅に帯同する馬がいると聞いて、モノレールの終点が海外に繋がっていることを意識するのですが・・。
「ビーバーの小枝」
100通以上の手紙を交換しながら一度も会えなかった翻訳家の家をはじめて訪れる小説家が、手紙のなかで触れられていた息子から、ビーバーが削ったという小枝をプレゼントされます。翻訳家は、拾った小枝を傍らに置いて文章を綴っていたというのです。
100通以上の手紙を交換しながら一度も会えなかった翻訳家の家をはじめて訪れる小説家が、手紙のなかで触れられていた息子から、ビーバーが削ったという小枝をプレゼントされます。翻訳家は、拾った小枝を傍らに置いて文章を綴っていたというのです。
「ハモニカ兎」
オリンピックのマイナー競技が行われる村では、かつて乱獲で絶滅させてしまったハモニカ兎をマスコットにしていました。兎が描かれた看板が抱える、開催日までの日数を数えるカレンダーは毎日めくられ、ついに開会式の日を迎えるのですが・・。ちなみに村人たちがルールを理解できないマイナー競技とは、野球です。
オリンピックのマイナー競技が行われる村では、かつて乱獲で絶滅させてしまったハモニカ兎をマスコットにしていました。兎が描かれた看板が抱える、開催日までの日数を数えるカレンダーは毎日めくられ、ついに開会式の日を迎えるのですが・・。ちなみに村人たちがルールを理解できないマイナー競技とは、野球です。
「目隠しされた小鷺」
小さな美術館で受付のアルバイトをしている女性と、たった一枚の絵だけを鑑賞するために、目隠しをして館内を移動する修理屋の老人の間に奇妙な友情が芽生えます。老いぼれた老人が修理の腕を振るって、小鷺を助けるラストシーンはいいですね。
小さな美術館で受付のアルバイトをしている女性と、たった一枚の絵だけを鑑賞するために、目隠しをして館内を移動する修理屋の老人の間に奇妙な友情が芽生えます。老いぼれた老人が修理の腕を振るって、小鷺を助けるラストシーンはいいですね。
「愛犬ベネディクト」
ドールハウスの中で飼っているミニチュア犬「ベネディクト」は、家を出ることのない妹が唯一大切にしている相手です。妹が盲腸で入院する間、ベネディクトを預かることになった兄でしたが、行方不明になってしまいます。この後、どうなるのでしょうか。
ドールハウスの中で飼っているミニチュア犬「ベネディクト」は、家を出ることのない妹が唯一大切にしている相手です。妹が盲腸で入院する間、ベネディクトを預かることになった兄でしたが、行方不明になってしまいます。この後、どうなるのでしょうか。
「 断食蝸牛」
門限の厳しい断食施療院に入所して風車守に会いに行く女は、風車の中に飼われている蝸牛に心惹かれていました。ある日、万華鏡のように耀く触角を持った蝸牛を街で拾って、風車の蝸牛と一緒にするのですが・・。蝸牛の発色とは伝染病だったのですね。
門限の厳しい断食施療院に入所して風車守に会いに行く女は、風車の中に飼われている蝸牛に心惹かれていました。ある日、万華鏡のように耀く触角を持った蝸牛を街で拾って、風車の蝸牛と一緒にするのですが・・。蝸牛の発色とは伝染病だったのですね。
「竜の子幼稚園」
何かの理由で旅が出来ない人に替わって、片時も離さない「身代りガラス」の中入れた身代わりの品とともに世界中を旅する女性。あるひ旅先で出会った同業者がガラスの中に入れていたのは、2匹のタツノオトシゴでした。彼らが形作る3月3日は、女性にとって忘れられない日付だったのですが・・。
何かの理由で旅が出来ない人に替わって、片時も離さない「身代りガラス」の中入れた身代わりの品とともに世界中を旅する女性。あるひ旅先で出会った同業者がガラスの中に入れていたのは、2匹のタツノオトシゴでした。彼らが形作る3月3日は、女性にとって忘れられない日付だったのですが・・。
「彼ら」すなわち動物たちは「いつもどこかに」いるはずなのですが、蝸牛を除いては登場してきません。「不在の動物たちと言葉ではないもので通じ合う」ことをテーマとした作品集なのでしょう。
2014/5