りぼんの読書ノート

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悪の法則(コーマック・マッカーシー)

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現代アメリカを代表するノーベル賞候補作家である著者が、自ら映画会社に持ち込んだ脚本が本書です。リドリー・スコット監督と豪華俳優陣によって映画化されました。映画は未見ですが配役はイメージ通りであり、想像しながら読んだことを告白しておきましょう。

ストーリーはシンプルです。若く有能な弁護士(マイケル・ファスベンダー)が、フライトアテンダントをしている純真で知性的な恋人ローラ(ペネロペ・クルス)に婚約指輪をプレゼントするため、友人の実業家ライナー(ハビエル・バルデム)に勧められて、たった一度のつもりで麻薬取引に手を染めます。

しかし「悪の法則」は、そんな男を見過ごしてはくれません。弁護士はいつの間にか追いこまれていき、彼にも彼の周囲にも、容赦ない暴力が襲い掛かってくるのです。暴力に押しつぶされるだけの男たちと異なり、麻薬ブローカー(ブラッド・ピット)らに復讐を果たしたのは、ライナーの愛人であったミステリアスな女性マルキナキャメロン・ディアス)でした・・。

思わせぶりな会話が「悪と暴力」の周辺を巡っているだけの前半と、次々と人が殺されていく後半が対称的です。一歩踏み込んだら二度とは引き返せないというのが「悪の法則」ということなのでしょうが、どうもそれだけではなさそうです。

ヒョウ柄のタトゥーを入れて2匹のチーターを飼っているマルキナは、血と暴力の国で「「悪意を持った運命」のように描かれるシュガーのような存在なのか、それともシュガーを超越しえる存在なのか。著者がどう思っているのか、聞いてみたいところです。たぶん安易な正解など、与えてはもらえないのでしょうが。

2014/4