りぼんの読書ノート

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ときぐすり(畠中恵)

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まんまことシリーズの第4作となる本書は、前作 こいわすれの衝撃的な事件から、主人公・麻之助が再生の兆しを見せるようになるまでが描かれます。

「朝を覚えず」
妻・お寿ずを失くしてから1年。麻之助は、覚めない夢の中でお寿ずの面影を追い続けています。実はそれは、ある眠り薬をめぐる騒動と関係していたのですが、自分を実験台にしてしまう危うさには、はらはらさせられます。

「たからづくし」
親類一同から嫁取りを迫られた、隣町の名主で友人の清十郎が失踪してしまいます。捜索の過程で、同心見習いの吉五郎からも、両国のイケメン貞からも、やっかいな相談を持ち掛けられる麻之助でしたが、それらは全部繋がっていたのです。モテ男の清十郎の意外な失恋譚です。

「きんこんかん」
今度はカタブツの吉五郎が突然モテ始める物語。もちろんそれには裏の事情がありました。本筋とは外れますが、最近ますます亡くなったお寿ずに似てきた親戚のおこ乃ちゃんが、はじめて麻之助のことを意識する場面が描かれます。でも、このふたりが結ばれてしまって良いのでしょうか。

「すこたん」
近所同士ながら仲の悪い大店の喧嘩の裁定は、妙なことになってきました。持参金は高いものの、訳ありで我儘娘の「緒すな」を互いに押し付け合うことになるのです。でも、持参金や家柄とは違うところで縁づいた方が、彼女のためですね。吉本新喜劇のような「芝居」がピタッとはまりました。

「ともすぎ」
高利貸しとして恐れられる丸三が、武家が絡む災難にあってしまいます。その背景には、強欲な老人である丸三が、吉五郎に感じる不思議な友情があったのでした。友を得ることは難しいのです。

「ときぐすり」
北国から流れてきた滝助少年と、麻疹で跡取り息子を亡くした袋物師の数吉と、一人暮らしの老婆・むめ婆の不思議な結びつきが描かれます。「今まで一人だった三人」を見て、自分にとって何が「ときぐすり」であったのかを考え始める麻之助は、妻を失った悲しみからの立ち直りつつあることを自覚するのです。

姉妹編ともいうべきしゃばけシリーズと異なって、本シリーズでは時間が流れています。今後も見逃せません。

2014/4