りぼんの読書ノート

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聖なる怠け者の冒険(森見登美彦)

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祇園祭宵山の夜を舞台に繰り広げられる冒険譚は、宵山万華鏡の不思議なテイストに有頂天家族のタヌキを織り込んで、夜は短し歩けよ乙女四畳半神話大系のエッセンスを取り込んだ雰囲気に満ち、いわば著者の世界観をテンコ盛りにしたような作品です。

京都郊外の研究所に勤める社会人2年目の小和田君は、休日は眠って過ごすことを愛する筋金入りの怠け者。趣味は「将来お嫁さんを持ったら実現したいことリスト」を改訂し続けること。そのささやかな願いを妨げる、「充実した休日を過ごすべく予定を詰め込む」恩田先輩と桃木さんのカップルからのイベントへの誘い。さらにとどめを刺したのが、京都で人助けを行う怪人「ぽんぽこ仮面」からの跡継ぎ襲名の依頼。

「ぽんぽこ仮面」の正体解明の依頼を受けたマイペース探偵や、「ぽんぽこ仮面」を捕まえようとする謎のアルパカ男らも絡んで大騒動が巻き起こる中、宵山の夜に不思議な世界の扉が開いていきます。そして、意外な生い立ちを持ち、意外な活躍を見せるのが方向音痴の探偵助手である玉川さん。彼女のキャラは、まさに「黒髪の乙女」ですね。「怠け者が怠け者のままで冒険する」という矛盾は、果たして克服されるのでしょうか。

大阪に転勤して2年近くになりますが、これまで祇園祭の時期は出張で、一度も行けていないのです。今年こそは宵山の夜の京都の怪しげな雰囲気を楽しみながら、そぞろ歩きをしてみたいものです。

2014/4