りぼんの読書ノート

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嘆きの橋(オレン・スタインハウアー)

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先に読んだ極限捜査が、共産圏に取り込まれてソ連の監視と統制の下で生きざるを得なかった、東欧の架空の国を舞台にした連作警察小説「ヤルタ・ブールヴァード」シリーズの第2作というので、第1作を読んでみました。

ソ連の封鎖によって飛び地となった西ベルリンに向けて「大空輸作戦」が敢行されている1961年。殺人課に配属された若い刑事エミールは、国民的作曲家が惨殺された事件の担当になったものの、即座に中止命令が下されます。しかも、不安に怯える美しい未亡人を守ろうと捜査を継続したエミール自身が、何者かに襲われてしまうのです。

事件の背後にあるものを探り出すべく、被害者がコンタクトしていたベルリンに飛んだエミールは、政府高官の驚くべき過去を見つけてしまうのですが・・。果たして彼は捜査を全うできるのでしょうか。

第2作もそうだったように、旧東側世界において権力を持つ者の犯罪をどう裁けるのかというテーマに挑んで成功している、よくできた歴史ミステリです。殺人課付きの国家公安捜査官であるブラーノ・セブの存在が効いています。主人公や家族の歴史も、よく書き込まれているのです。

しかし日本では人気が出なかったようで、全5作のうち2作までで翻訳が中断しているようです。数年前にツーリストが映画化されたくらいでは、シリーズ再開とはいかないのでしょうね・・。

2014/4