りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

コーデックス(レヴ・グロスマン)

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英国の伯爵家の依頼で、蔵書を整理することになったエドワード。そこには14世紀に書かれた幻の古写本があるはずというのですが、図書館で偶然知り合った中世学専攻の女子学生マーガレットからは、その本は有名な偽書と言われてしまいます。どうやら古書の作者は14世紀にその伯爵家の従者であった者で、その本には伯爵家にまつわる重大な秘密が隠されているようです。

かつて伯爵家の本が寄贈された図書館に忍び込んだエドワードは、図書館周辺の風景があるネットゲームの中で再現されていることに驚くのですが、古書とゲームの類似はそれにとどまりませんでした。その本は実在するのか。あるとしたら、どこにあるのか。伯爵家の秘密とは何で、誰がそれを手に入れたがっているのか。そして、ネットゲームとの不思議な関係はどういうことなのか。謎が、めいっぱいふくらんでいきます。

偽書として伝わる本では、領主と騎士が、恐ろしい谷に乗り込んだ後の1ページは、真っ黒に塗りつぶされているのですが、いったいそこで何が起きたと書きたかったのか、との疑問も、関心を深めます。中世では現実とフィクションの違いが判然としていなかったことも指摘され、フィクション世界に嵌りこんでしまう危険も語られるのですが、そのあたりもネットゲームが子供に与える弊害として語られることと奇妙に類似していますね。

この種の本の価値は、隠されていた「秘密」が何であったのかに依る所がとっても大きいわけですが、なかなかステキな「秘密」でしたよ。本の在りかにたどりつくヒントは「パケット通信」とでも言っておきましょうか。

2007/1