りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

古書店主(マーク・プライヤー)

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セーヌ河岸の露店で古書を売る「ブキニスト」となるには、パリ市の許可が必要で、現在250人ほど。世界文化遺産にもなっている存在だとのこと。

知り合いの老ブキニストが暴漢に連れ去られたのを目撃した、元FBIアメリカ大使館の主人公ヒューゴーは、動こうとしないパリ市警にしびれをきらして、中年の危機にある元CIAの旧友トムと2人で操作に乗り出します。その過程で明らかになったのは、老ブキニストが元ナチ・ハンターだったという過去。直前に買った古書『地獄の季節』が、ランボーの自筆書き込みがある超稀覯本だということ。さらに、ブキニストが次々と行方不明になっているというショッキングな事実でした。

第二次世界大戦中のナチとレジスタンスの攻防や、古書に隠された意外な秘密、パリで起きている麻薬密売団の抗争など、重層的に重なる謎は、どのように収斂していくのでしょうか。コナン・ドイルやクリスティの名作を彷彿とさせるような推理も行われます。

美人ジャーナリストのクラウディアや、彼女の父親で稀覯コレクターのルシアン伯爵、パリ警視庁主任警部のラウル・ガルシア、ブキニスト組合の長である不気味なグラヴァなどの主要登場人物は、ヒューゴの良き理解者であるブラッドフォード・テイラー大使を除けば、皆欧州人。本書は、カウボーイ・ブーツがトレードマークという生粋のテキサス人が、捜査権もないまま、異文化の都で右往左往するという「パリのアメリカ人」ぶりも楽しめる作品なのです。

2015/2