警官から古書店主へと転身したクリフォード・ジェーンウェイの「古書シリーズ」4作目。前巻『失われし書庫』で、新大陸におけるリチャード・バートン卿の足跡をともに辿った弁護士のエリンと、そのままつきあっているクリフォードですが、今回はそのエリンから依頼された事件。
コロラドの山奥の辺鄙な町で蔵書家が殺害されます。被害者の男性はエリンのもと恋人で、殺人を自白したのは彼の妻となっていた元親友のローラ。エリンは、親友に彼氏を横取りされちゃってたわけです。これだけなら普通の殺人事件ですが、被害者は貴重なサイン本を何百冊もコレクションしており、それを巡って怪しい人物が周囲をうろつき始めます。
ローラの自白は自閉症の息子をかばったものとしか思えないのですが、町の保安官補はとんでもないヤツ。ローラが犯人と決め付けて、逆に他所者を排除にかかる。第三者の犯行という線もあることを指摘したクリフォードとエリンでしたが・・。
今回は「サイン本」をテーマにした物語ですが、古書に関する薀蓄はあまり出てきません。でも、「偽書」というテーマ自体が、立派な薀蓄ですね。サイン本を信頼してはいけないようです。ミステリとしては『推定無罪』を髣髴とさせる展開で、なかなか読み応えがあったのですが、何かを髣髴とさせる点で既に、目の肥えたミステリ・ファンからは厳しい評価を受けるのでしょうか?
この「古書シリーズ」、これで終わりかと思っていましたが未翻訳の本がもう一冊あるとのこと。期待して待ちましょう。
2009/8