りぼんの読書ノート

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国芳一門浮世絵草紙3 鬼振袖(河治和香)

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侠風むすめあだ惚れに続く、「国芳一門浮世絵草紙」シリーズの第三弾です。

「鬼振袖」とは薹(とう)の立った娘の振袖姿のこと。破天荒な浮世絵師国芳を父に持ち、それぞれが魅力ある一門の絵師たちに囲まれて育ったおきゃんな美少女登鯉(とり)にも、いつの間にか娘時代は過ぎてゆきます。

濡色
登鯉の初恋の相手で一度は抱かれた芳雪は、別れた恋女房を忘れられずにいたんですね。男前の絵師・芳雪が生きた無間地獄とはどんなものだったのか。

仙女
絵師の娘として同じ境遇と思い、密かに慕っていた北斎の娘・お栄が去っていきます。我がまま勝手だった父・北斎が亡くなり、「仙女になりたい」といって消息を絶つのです。絵師の娘でいる間に、いつしか老女となったお栄の生き方に、登鯉は何を思うのか。

市芳
尾張家の殿様が歌川一門のファン? 跡目争いで混乱する尾張家の十三代当主は、まだ10歳の少年でした。反対派から生命さえ狙われ、自由に街も歩けない殿様を助けようとする一門でしたが・・。

去跡
登鯉が激しい思いを抱いた相手だった「彫師の乃げん」が島流しから帰ってきていた。島で知り合った女を妻にし、娘に「とり」と名づけていた男に、登鯉は怒りをぶつけます。

狸汁
国芳一門の周辺に出没する怪しい影は、行き過ぎた風刺画を咎める老中・阿部伊勢守の放った探索? 南町奉行に返り咲いた遠山の金さんは、昔からの友人である国芳に忠告するのですが・・。

まだ19歳なのに、当時はもう「嫁入り」を心配されるお年頃。いい年の娘なのにまだ着物も縫えず、髪を振り乱して博打場にも出入りする。絵師として生きていくまでの決心もつかない。惚れてくれてる新場の若親分の胸に飛び込むまでの思い切りもつかない。そんな登鯉ちゃんの揺れ動く女心がたっぷりと描かれた一冊になっています。

2009/8