りぼんの読書ノート

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閻魔の世直し(西條奈加)

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表の顔は堅気の商売をしているものの裏の顔は凄腕の悪党揃いという善人長屋の続編です。悪党と言っても最低限の人の道を外すことなく、むしろ手違いでここに住み込んだ「長屋で唯一の善人」加助の人助けに振り回されてばかり。差配の娘のお縫は、ニュートラルな視点から皆を眺めては、善と悪の境界線の難しさに頭を悩ませているのです。

そんなお縫が恋に落ちてしまいました。長屋を訪れて「善人を気取るものほど胡散臭い」と言ってのけた新しい同心の白坂に、自分と同じ匂いを感じたようです。

そんな時、裏街道の頭衆を次々に血祭りにあげて天誅を気取る「閻魔組」と名乗る集団が現れます。しかし彼らの直接行動は、世直しに繋がらないどころか世間を物騒にしただけのこと。頭衆を失った江戸に他所から乗り込んできた悪党たちが、今まで頭衆が押さえてきた残虐な悪事を繰り広げたのですから。とすると、「閻魔組」は誰かに操られているのでしょうか。

ついに火の粉が降りかかってきた「善人長屋」の一党は、「閻魔組」の裏に潜む悪党をあぶりだそうとするのですが、お縫の心は揺れるのです。考えれば考えるほど、白坂が「閻魔組」の一員に思えてしまう。ついにお縫のとった無茶な行動は、皆を窮地に陥れそうになるのですが・・。

本書の持ち味は、微妙な緩さと微妙なシリアスさが微妙にバランスを保っているようなところでしょうか。このバランスは安定に向かうのか、崩壊に向かうのか。個人的には、だらだらと長いシリーズにするより、「善人長屋」の行き先を短期決戦で描ききって欲しいと思います。

2013/11