本書が出版された1970年代ではまだ、近親相姦や小児性愛や服装倒錯や幼児退行などはタブーに属していたのでしょう。現代ではすでに目新しくはないテーマなのですが、各短編を貫いてるのはエロティシズムではありません。むしろ皆が心の奥底に秘めており、一歩間違うと陥る可能性がある「異常性の罠」というもでのあるように思います。
「立体幾何学」
祖父の日記にあった超数学ともいうべき「消滅する面」の理論。主人公は不仲の妻の身体を使って、その理論を試すのですが・・。いくらなんでもそれは無理でしょう。そもそもそんなに身体の柔らかい人っているのでしょうか。
祖父の日記にあった超数学ともいうべき「消滅する面」の理論。主人公は不仲の妻の身体を使って、その理論を試すのですが・・。いくらなんでもそれは無理でしょう。そもそもそんなに身体の柔らかい人っているのでしょうか。
「自家調達」
14歳の兄が童貞喪失のために10歳の妹を誘惑するという物語ですが、そこに至るまでの悪友との関係や、コトが終わってからの冷めた回想の情けなさが印象に残ります。
14歳の兄が童貞喪失のために10歳の妹を誘惑するという物語ですが、そこに至るまでの悪友との関係や、コトが終わってからの冷めた回想の情けなさが印象に残ります。
「夏が終わるとき」
両親が死んだあと、兄が友人たちを集めて作ったコミューンで育つ少年のひと夏の思い出は、擬似家族の崩壊でした。母親の役割を果たしていた太った女性と、彼女が世話をしていた別のカップルの赤ん坊が乗ったボートが転覆したのです。ボートを漕いでいたのは少年だったのですが。
両親が死んだあと、兄が友人たちを集めて作ったコミューンで育つ少年のひと夏の思い出は、擬似家族の崩壊でした。母親の役割を果たしていた太った女性と、彼女が世話をしていた別のカップルの赤ん坊が乗ったボートが転覆したのです。ボートを漕いでいたのは少年だったのですが。
「劇場の大将」
開けっぴろげなセックスを前面に出した前衛演劇の稽古中に起きた、ちょっとした事件。笑えます。
開けっぴろげなセックスを前面に出した前衛演劇の稽古中に起きた、ちょっとした事件。笑えます。
「蝶々」
引きこもりの男性が、幼女に性的悪戯をした末に殺害してしまうというショッキングな事件を扱っていますが、現実のほうがずっと先に行ってしまいました。
引きこもりの男性が、幼女に性的悪戯をした末に殺害してしまうというショッキングな事件を扱っていますが、現実のほうがずっと先に行ってしまいました。
「押入れ男は語る」
青年になるまで赤ん坊として扱われた男が、母親から放り出されたらどうなってしまうのか。体内回帰願望を極限まで推し進めた実験小説でしょうか。
青年になるまで赤ん坊として扱われた男が、母親から放り出されたらどうなってしまうのか。体内回帰願望を極限まで推し進めた実験小説でしょうか。
「最初の恋、最後の儀式」
一夏のあいだ少女とセックスをし続けた少年は、少女の身体から怪物が生れてくるような錯覚に陥ります。実際に彼らの前に現れたのは巨大なネズミでしたが、ネズミを殺害したあとのおぞましさが印象に残ります。でも、この2人はズルズル関係を続けていくのかもしれません。
一夏のあいだ少女とセックスをし続けた少年は、少女の身体から怪物が生れてくるような錯覚に陥ります。実際に彼らの前に現れたのは巨大なネズミでしたが、ネズミを殺害したあとのおぞましさが印象に残ります。でも、この2人はズルズル関係を続けていくのかもしれません。
「装い」
母の死後に母親代わりとなった叔母からコスプレを強制される少年が、女装した自分と似ている女生徒と学校で知り合います。倒錯的な感情が沸き起こりますが、どこかシュール。
母の死後に母親代わりとなった叔母からコスプレを強制される少年が、女装した自分と似ている女生徒と学校で知り合います。倒錯的な感情が沸き起こりますが、どこかシュール。