りぼんの読書ノート

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比類なき翠玉(ケルスティン・ギア)

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「時間旅行者の系譜」とのサブタイトルを持つファンタジー3部作の最終巻。自分が突然、「円環を閉じる」役割を担う12人目のタイムトラベラーであると気づかされ、準備もないまま過去への冒険に狩りだされたグウェンは、普通の女子高校生。ペアを組まされたハンサム・ボーイのギデオンにメロメロになったものの、彼からは「任務のための友達つきあい」と言われて、絶望の真っ只中。

でもそんなことで落ち込んでいる場合ではありません。18世紀から現代まで繋がる予言が間違い泣く実行されるよう「監視団」を作り上げたサンジェルマン伯爵の野望が、今まさに達成されようとしていたのです。果たして予言の目的は何だったのか。伯爵に反逆した先代トラベラーのルーシーとポールは、何をしようとしていたのか。そしてギデオンとの関係は?

全ての謎がラストで一気に解決していくのは、この種の小説の「お約束」ですが、かなり都合よすぎたかも。伯爵は予想通りの悪役だったけど、彼の野望は意外と小粒。グウェンの出生の秘密は、ヒントがありすぎて想像通り。若い2人のハッピーエンドは当然だけど、この2人はこれから先が長そうです。だって、グウェンが生まれつき持っていた「鴉の魔法」と、ギデオンが横取りした伯爵の秘密は「xxxx(ここだけネタバレ回避)」だったのですから。

でも、グウェンの明るいキャラが本書を救ってくれたようです。それと、賢い友人のレスリーや、グウェンを恨むシャーロットなどのサブキャラも。また、トラベラーにとって明日のことが、待ち受ける側には数十年後だったり過去だったりというタイムトラベル・ストーリーの真髄も良く書けていたと思います。ジャンルとしては「ヤングアダルト小説」でしょうが、勢いを感じました。女の子は皆、「マジパンでできたハート」を持っているのです。

2013/11