宮部みゆきさんの新作を連続して読みました。2作ともいつも通り見事な構成の物語ですが、どちらにも東北の飢饉が登場するのは、大震災への著者の思いなのでしょう。今月1位とした『世界を回せ』もまた、大災害をテーマとした作品です。9.11の同時多発テロに一言も触れることなく、誰もが事件を思い出さざるをえない「絆」の物語であることは、宮部さんの作品とも共通しています。 須賀しのぶさんの『流血女神シリーズ』が佳境に入ってきました。ラノベでありながら独特の世界観を持つ楽しい作品です。
1.世界を回せ(コラム・マッキャン)
1974年にワールドトレードセンターのツインタワーの間で綱渡りをした男がいました。本書は、彼を見上げて視線を共有した者たちの間に生じた、人種、階層、貧富、年齢の差を越えた「絆」の物語。37年後に同じツインタワーを見上げることになった人たちの間には、どのような繋がりが生じたのでしょうか。それまで接点を持たなかった人たちが繋がり、過去と未来が繋がって、世界は回り続けていくのです。
1974年にワールドトレードセンターのツインタワーの間で綱渡りをした男がいました。本書は、彼を見上げて視線を共有した者たちの間に生じた、人種、階層、貧富、年齢の差を越えた「絆」の物語。37年後に同じツインタワーを見上げることになった人たちの間には、どのような繋がりが生じたのでしょうか。それまで接点を持たなかった人たちが繋がり、過去と未来が繋がって、世界は回り続けていくのです。
2.桜ほうさら(宮部みゆき)
偽筆文書を証拠に汚名を着せられて切腹した武士の息子が、父親の汚名を晴らすべく奮闘する物語は、人が「書くこと」への根源的な問いに結びついていきます。手跡の違いはものを見る眼の違いであるなら、完璧な偽筆者とは他者の人格になりきれる者なのでしょうか。主人公の転機となる奥州飢饉のエピソードには、大震災と津波に対する著者の思いも込められているようです。いつもながら見事な構成です。
偽筆文書を証拠に汚名を着せられて切腹した武士の息子が、父親の汚名を晴らすべく奮闘する物語は、人が「書くこと」への根源的な問いに結びついていきます。手跡の違いはものを見る眼の違いであるなら、完璧な偽筆者とは他者の人格になりきれる者なのでしょうか。主人公の転機となる奥州飢饉のエピソードには、大震災と津波に対する著者の思いも込められているようです。いつもながら見事な構成です。
3.泣き童子 三島屋変調百物語事続(宮部みゆき)
「聞いて、聞き捨て。語って語り捨て」。叔父夫婦のもとに身を寄せた娘おちかが聞く怪異話シリーズの第3作。著者が「恋バナあり、怪獣ありのやりたい放題」と述べているのは、おちかが人の話を受け止められるほどに成長しきたからとのこと。人は怪異に遭わなければ幸なのか。遭っても凌げる力を持つほうが幸なのか。怪異話を知ることは凌ぐ力に結びつくのか。本書にも東北の飢饉の話が登場します。やはり底流には大震災への著者の思いがあるようです。
「聞いて、聞き捨て。語って語り捨て」。叔父夫婦のもとに身を寄せた娘おちかが聞く怪異話シリーズの第3作。著者が「恋バナあり、怪獣ありのやりたい放題」と述べているのは、おちかが人の話を受け止められるほどに成長しきたからとのこと。人は怪異に遭わなければ幸なのか。遭っても凌げる力を持つほうが幸なのか。怪異話を知ることは凌ぐ力に結びつくのか。本書にも東北の飢饉の話が登場します。やはり底流には大震災への著者の思いがあるようです。
【その他今月読んだ本】
・神の熱い眠り(オースン・スコット・カード)
・キャピトルの物語(オースン・スコット・カード)
・砂の覇王 9(須賀しのぶ)
・神は死んだ(ロン・カリー・ジュニア)
・善人長屋(西條奈加)
・イースタリーのエレジー(ペティナ・ガッパ)
・彼岸過迄(夏目漱石)
・僕僕先生7 童子の輪舞曲 (仁木英之)
・書店ガール2(碧野圭)
・女神の花嫁(須賀しのぶ)
・呪われた天使、ヴィットーリオ(アン・ライス)
・まんまこと(畠中恵)
・フリーファイア(C.J.ボックス)
・アイルランド短篇選(橋本槙矩/編訳)
・暗き神の鎖(須賀しのぶ)
・名画を読み解くアトリビュート(木村三郎)
・こいしり(畠中恵)
・失われた探険家(パトリック・マグラア)
・神の熱い眠り(オースン・スコット・カード)
・キャピトルの物語(オースン・スコット・カード)
・砂の覇王 9(須賀しのぶ)
・神は死んだ(ロン・カリー・ジュニア)
・善人長屋(西條奈加)
・イースタリーのエレジー(ペティナ・ガッパ)
・彼岸過迄(夏目漱石)
・僕僕先生7 童子の輪舞曲 (仁木英之)
・書店ガール2(碧野圭)
・女神の花嫁(須賀しのぶ)
・呪われた天使、ヴィットーリオ(アン・ライス)
・まんまこと(畠中恵)
・フリーファイア(C.J.ボックス)
・アイルランド短篇選(橋本槙矩/編訳)
・暗き神の鎖(須賀しのぶ)
・名画を読み解くアトリビュート(木村三郎)
・こいしり(畠中恵)
・失われた探険家(パトリック・マグラア)
2013/10/30