りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ミミズクと夜の王(紅玉いづき)

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先に読んでしまった続編毒吐姫と星の石が面白かったので、こちらも借りてきました。

魔物のはびこる夜の森を訪れた少女は、額に焼印を押され、両手両足には鎖を巻きつけたままの逃亡奴隷でした。自らをミミズクと名乗る少女の願いは、たったひとつ。フクロウと名づけた美しき魔物の王に頼んだことは「あたしのこと、食べてくれませんかぁ」。

人間嫌いのフクロウは少女を持て余しますが、やがて魔力の衰える新月の晩、人間の魔術師たちに捕らえられてしまいます。その間際に少女にかけた魔術とは、彼女の幸せを願うものでした。一方、魔王を捕らえて少女を「救出」したレッドアーク王国には、妻を亡くした賢王ダンテスと、生まれつき手足を動かせない不幸な王子ディア、そして聖騎士アンディと剣の処女オリエッタの夫婦がいたのです。

全くわけのわからない、ミミズクのキャラがいいですね。不幸のどん底とも言うべき辛酸を嘗め尽くしながら、王子を哀れまず、まして不幸比べなどせず、天真爛漫そのもの。しかしそれは裏を返せば、絶望の果てに精神が崩壊した状態なのかもしれません。そんな少女が怒りを覚えたのは、捕えられたフクロウが、彼女のためを思ってかけてくれた魔術の正体を知った時でした。そして少女に感情が戻ってきます。

デビュー作ですから、続編で見られるような「不思議な世界観」までは発現しておらず、「不思議なラブコメの失敗作」のようでもあるのですが、「不思議なティスト」は感じられます。

2013/8