りぼんの読書ノート

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毒吐姫と星の石(紅玉いづき)

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とっても楽しい作品でした。「和製ファンタジー」の担い手というと、荻原規子さんや、上橋菜穂子さんや、小野不由美さんらの名前があがりますが、ライトノヴェル作家の中から新しい世代が育っているんですね。中世騎士やグリムの世界をクール・ジャパン風に再構築したようなテイストです。

全知の天に運命を委ねる占の国ヴィオンに生れたエルザ姫。生まれてまもなく言葉という毒を吐いたエルザは国を滅ぼす者であると予言され、幼くして城下へと捨てられました。下層民の間で毒の言葉を吐きながら育った少女は、新たに予言された凶事に対する備えとなるべく、王家に復縁させられ、言葉を奪われた「言無し姫」として隣国である剣の国レッドアークの王子に嫁がされることになります。

この王子こそ、前作『ミミズクと夜の王(未読です)』に登場して夜の王に祝福を受けた、異形の手足を有するクローディアス(通称ディア)だったんですね。強制された運命に抵抗するエルザでしたが、ディアは彼女を歓待します。それはエルザへの愛なのでしょうか。それとも王子としての責務なのでしょうか。しかし、その頃ヴィオンでは陰謀が企まれていたのです。

「言無し姫」とされた「毒吐姫」が、過酷な運命と試練を乗り越えて「言霊の力を持つ姫」へと変貌していく成長物語ですが、本書を楽しい読み物にしているのは「誇張されたおとぎ話キャラ」でしょうか。おとぎ話の姫たちは、笑顔を鎧とし、言葉を剣として戦っていたんですね。本書には脇役として登場した真昼姫ことミミズクの物語である、前作も読んでみましょう。

2013/8