りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2013/7 無罪(スコット・トゥロー)

久々にスコット・トゥローさんの作品を読み、以前の作品を読み返してみたくなりました。優れた法廷小説とは真実を追究していく過程で人間性が問われていく物語なのです。すべてがさらけ出され、ギリギリの答弁を求められる法廷で、真実を語らない者はその報いを受けねばなりません。たとえその動機が何であったとしても・・。
 
初めて樋口一葉の小説を直接読みました。文語調の文章の美しさと、音読したときのリズム感が素晴らしい。やはり「名作」と謳われる作品は、実際に読んでみなければいけませんね。
1.無罪(スコット・トゥロー)
法廷小説の定義を覆した名作推定無罪の直接の続編が出るとは思ってもいませんでした。23年前の裁判で無罪を得たラスティ・サビッチは裁判官として上り詰めようとしていましたが、妻の急死に疑惑を抱いた検事局に再び起訴されてしまいます。今回は全てを知った者として被告席についたラスティが語ろうとしない真実とは何なのでしょう。家族の愛憎の深さも、意表を衝く展開も、すべてが一級の作品です。

2.たけくらべ(樋口一葉)
廓の街に住む勝気な美少女・美登利と、お寺の息子・信如のせつなく不器用な初恋。子どもらしい喧嘩をした夏の日と、一足飛びに大人にならざるを得なかった秋の日の対比が絶妙です。何より、文語調の文章に美しさを感じます。声に出して読んだときのリズム感の素晴らしいこと。他に「にごりえ」と「十三夜」を収録。

3.夏の嘘(ベルンハルト・シュリンク)
人は「嘘」をつきます。自分を守り他者を傷つけるためではなくても、親しい人を守ろうとして、世間の共通認識に合わせようとして、単に真実を話しそびれて、ついてしまう「嘘」もあります。それでも「嘘」は、その代償を求めるのです。名作朗読者の著者による短編集ですが、やはり巧みで深い作品です。



2013/7/31