りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

岳飛伝2(北方謙三)

イメージ 1

梁山泊は動き始めます。新たな頭領となった呉用が方針を示さず、事務的な現状維持に努めていたのは、各人に今後の進むべき道を考えさせるためでした。その背景には、かつて楊令に全てを託しすぎたという重鎮たちの忸怩たる思いがあったのです。しかし容易に結論など出るものではありません。「志」とは何なのか、聚義庁メンバーに選ばれた宣凱は悩みます。

そんな中で、王貴は黄河と長江を結ぶ山越えの道を開き、西域から長江に至る物流の道を作り上げていきます。張朔は南方へと赴き、甘蔗を取り扱う新たな交易相手を開拓。どちらも中国史において画期的なこと。しかし最も驚くのは、顧大嫂が西遼王・耶律大石に惚れられて后となっていること!完全に「おばちゃんイメージ」なのに・・。

南宋の宰相・秦檜の考える国の形は、文治主義による富国策のようです。その上に立って、禁軍の劉光世や水軍の韓世忠、さらには若く新しい将軍らを秩序正しく動かしてこそ中華統一は果たせるとの夢を抱くのです。軍閥化している岳飛や張俊との関係は、おのずから微妙なものにならざるをえません。

金軍元帥の兀朮(ウジュ)は、南進に先立って必要な梁山泊の殲滅を決断。20万の大群を繰り出しますが、そう簡単にできませんよね。迎え撃つのは、呼延凌、秦容、山士奇、史進、蘇琪ら。戦闘の中で、兀朮が密かに養子にしている胡土児(コトジ)が非凡な才能を見せ始めます。それもそのはず、胡土児は楊令自身も知らなかった楊令の息子なのですから。

またひとつ巨星が落ちました。もと林冲の武術師範であり、心に欠落を負った鮑旭・武松・史進・馬麟らの立ち直りを助け、楊令・張平・秦容・花飛麟・蔡豹・王清らの人材を育てあげた子午山の王進が、妻・公淑とともに亡くなります。74歳になった呉用にも残された日は長くなさそうです。夥しい退場者と登場者の移り変わりの中で、個人と歴史の関わりを考えさせられてしまいます。

2013/8