りぼんの読書ノート

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修道士カドフェル14 アイトン・フォレストの隠者(エリス・ピーターズ)

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シリーズ14作めである本書には、オックスフォードでスティーブン王に包囲された女帝モードの苦境が反映されています。修道院のあるシュールズベリーは、内戦時代においても比較的安定していたのですが、やはり影響を免れることはできないようです。

近郊のイートン荘園主が亡くなり、修道院に預けられていた10歳のリチャードが跡を継ぐことになりました。本人と修道院の意向を無視して、倍以上も年の離れた隣接荘園主の娘との政略結婚を画策する野心的な祖母ダイオシニア。しかしリチャードは、突然行方不明になってしまいます。

一方で、修道院が所有する森の草庵に住み付いたカスレッドと名乗る隠者の従者ハイアシンスは逃亡奴隷のようなのですが、捜索にきた領主ドロゴが死体で発見されるという事件が発生。果たして犯人はハイアシンスなのでしょうか。また、2つの事件の間に関係はあるのでしょうか。

隠者カスレッドの正体が全ての事件の鍵となっていたのですが、はじめから胡散臭かったですね。身分を隠して修道院を訪れた女帝モードの領臣レイフがつけた決着には、スティーブン王に忠誠を誓うシュールズベリ執行長官のヒュー・ベリンガーも、もちろんカドフェルも目をつぶったようです。内戦の時代においても中世的な騎士道はすたれていなかったということなのでしょう。

しばらく助手に恵まれなかったカドフェルに、ウィンフリッドという若者がつきました。不器用ですが、心優しい大男のようです。いずれ活躍する機会があるかもしれません。

2013/5