りぼんの読書ノート

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辺境の惑星(ル=グィン)

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ロカノンの世界に続く、「ハイニッシュ・ユニバース・シリーズ」の第2作です。前作からだいぶ時がたっているようですが、なんせ「辺境」ですので、銀河の中心部で行われた戦いの行方など、この星には情報すらも伝わってきていません。

中世的な城塞都市に住む少女ロルリーが、民族大移動的に攻め寄せてくるガール蛮の襲来を前にして、共闘を組む異種族「ファーボーン」の若きリーダー・アルテラに恋をする物語。はじめはロルリーの視点から描かれますので、「ファーボーン」なるものの正体がなかなかわからないのですが、彼らこそが宇宙の中心から派遣されていた正当な人類なんですね。ロルリーたちの種族こそが、この惑星に土着して独自の進化を遂げていた「観察対象」だったのです。

でも、このような辺境において、そのようなことには何の意味もありません。互いに自らを「人間」と呼び、相手を「異種族」とみなす者たちの間に、共闘は成立するのでしょうか。答えは「YES」なのですが、そこに至る理由は、理念でも正義感でもなく、恋愛というのがいいですね。

後にフェミニストとなる著者は、「若書き」の本書に対して、後に「女性解放イデオロギーと私」と題する「序文」を書いています。本書「サンリオ版」では巻末に収録されていますが、これは不要ですね。素直に、恋愛というものも「異種コミュニケーション」のひとつの形態であるとして、後の著作で明記されるテーマの萌芽があると読み取ればよいのではないかと思います。表紙は、竹宮恵子さんですし。^^

2013/5