りぼんの読書ノート

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修道士カドフェル13 代価はバラ一輪(エリス・ピーターズ)

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イングランドの王権をめぐるスティーブン王と女帝モードの戦闘は、一進一退のまま硬直状態に陥っているようです。ただしそのことは、シュールズベリのような地方都市にとっては平安無事を意味しています。そんな時代背景の中で起きた本書の事件は珍しく、きっかけも結末もロマンティックなものでした。とはいえ殺人事件も起きていますので、決してロマンティックなばかりではありません。

若くして資産家の未亡人となったジュディスが修道院に寄贈した門前通りの屋敷の代価は、毎年、屋敷の裏庭に咲く白バラを一輪、聖ウィニフレッドの移葬祭に届けてもらうことでした。屋敷は惜しくなかったものの、白バラには愛着を感じていたんですね。しかし、そのことが悲劇に繋がってしまいます。

毎年バラを夫人に届けていた若い修道士は、夫人を思慕してしまい、それを苦にして役目を免除してもらえるよう修道院長に懇願します。その願いはお咎めなしで聞き届けられたのですが、移葬祭が迫った日にその修道士が屋敷の庭で、ずたずたに切りつけられた白バラの根方で死んでいるのが発見されたのです。彼はなぜバラの庭に現れたのか。そして、誰に殺されたのか。カドフェルが謎を解明しようとしている矢先に、今度はジュデス夫人が行方不明になってしまいます。修道士を殺した犯人と、ジュディス夫人の誘拐事件はどう関係しているのでしょうか・・。

若く美しいジュディスには求婚者も多かったのですが、彼女の愛情を得ようとする行為と、財産を得ようとする行為は区別しなくてはいけませんね。もちろん、一線を越えるストーカー行為はもってのほか。事件が解明される中で、ジュディスは真の愛情を見つけたようですが、まぁハッピーエンドで良かったということでしょう。

ところで、カドフェルの助手も教区司祭のポジションも空いたままだということを、本書の最後に思い出させてもらいました。次の巻ではそのあたりに動きが出そうです。ただ、イングランド内戦が硬直状態だと、物語も中ダレしないかと心配です。

2012/8