りぼんの読書ノート

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UFOはもう来ない(山本弘)

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著者いわく「日本でいちばん濃いUFO小説」とのこと。「本当に異星人のUFOが地球に来ていたら」という設定の「ファースト・コンタクト」ものですが、UFOに関する薀蓄が盛り込まれているだけでなく、異星人の既成イメージを破壊する作品。

月の裏側に秘密基地を作り、1946年から地球をひそかに監視していた異星人スターファインダーは、自分たちの存在が地球の文化に大きな影響を与えていることを知り、「最終シークエンス」の発動を計画していました。しかし、計画責任者のペイルブルーの乗ったUFOがスペースデブリと衝突して墜落。京都の山中で小学生たちに捕われてしまいます。子どもたちから連絡を受けて向かうのは、インチキUFO番組のディレクターである大迫と、祖父の後を継いでマジメなUFO研究家となっている木縞。

一方で詐欺師の龍彫を教祖とし、大阪に拠点を有する巨大カルト団体DSIが、信者である小学生の姉から情報を聞き出し、異性人を拉致。大迫や千里は小学生たちと組んで、異性人奪還計画に乗り出すのですが・・。

途中のドタバタ劇はともかくとしてく、本書のハイライトは「異星人の実態」と「銀河の歴史」、そして「最終シークエンス」の内容です。なぜ異星人は地球人とのコンタクトを避けてきたのか。古代の銀河を戦乱の渦に巻き込んだ「超越者戦争」とは何だったのか。異星人は地球をどうしようとしているのか・・。やはり、UFOや異星人とのコンタクトはないほうが互いにハッピーなようです。たとえ「共感」程度は交し合えるとしても。

ところで本書に登場する異星人スターファインダーは、頭足類を起源としています。そのせいか、イカやタコならこう感じるのではないかと思われる格言やことわざが山ほど登場して、そのあたりも楽しい作品。途中、どうしても理解できない格言がひとつあるのですが、その理由は最後に明かされます。その格言の意味することが、本質的で重いテーマだったんですね。

2013/4