りぼんの読書ノート

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老人と宇宙2 遠すぎた星(ジョン・スコルジー)

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宇宙へと進出した人類が、好戦的な異星人たちと遭遇した遠い未来。人類の平和と繁栄を守るために結成されたのが、75歳以上の老人たちで結成された「コロニー防衛軍」でした。そんな老人たちが闘えるのかって? 心配後無用。彼らは超絶テクノロジーで若返り、強化された身体能力を手に入れるのと引き換えに数年で3/4が命を落とすと言われる異星人たちとの闘いに身を投じていくのです。

第1巻でのこの設定は意表を衝いてくれましたが、続編となる本書の主人公は、若返る前に死亡した老人たちの遺伝子からクローン技術で「促成栽培」された「ゴースト部隊」になります。固有の意識パターンは有するものの、はじめから「戦士」になる以外の選択肢はなく、「製造」されてから数日という短期間で戦闘に投入されていくという異様な存在に感情や個性はあるのか・・というのがテーマですね。

互いに戦い合っていた3つの異なる種族の異星人たちが「反コロニー連合」を組み、その背景には人類を裏切った天才科学者ブーティンがいる、との情報を得て、彼の思考パターンを再現するために彼の遺伝子からクローンが「製造」されます。過去の科学者の名前をつけるという「ゴースト部隊」の伝統から、ディラックと名づけられたクローンは、期待以上の働きをするのですが・・。

地球を外宇宙と隔絶させたままにして、植民者と軍隊の供給基地としてだけ利用し、ほとんど全ての異星人を敵としている「コロニー連合」という存在は、異星人たちにとってはもちろん、人類自らにとっても「敵」ではないのかという根本的な問いが、次巻に続くテーマとして提示されています。

2009/8