りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

オレたちバブル入行組(池井戸潤)

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かつて銀行マンだった著者による「銀行内幕小説」ですが、タイトルから想像つくように軽い内容です。

「売手市場」であったバブル期に苦労もせずに大手銀行に入行した同期5人にとって、10数年後の「未来」は当時の夢とはかけ離れてしまっていました。最優秀でニューヨークに赴任した男が9.11テロで行方不明となってしまったのは残念ですが、他は望んでいた花形職場につけなかったり、上司のパワハラで精神を病んだりする者も出る始末。大阪西支店の融資課長になっていた主人公の半沢は倒産会社の不良債権回収に追われる日々を過ごしています。

そんな中、支店長命令で無理やり融資の承認を取り付けた5億円の焦げ付きの責任を取らされそうになった半沢は、「不自然さ」を感じて反撃に出ます。偽装倒産を疑って、行方をくらました経営者の足跡を追い、その背後に意外な人物がいることをつきとめるに至ります。しかしサラリーマンの哀しさ、本店で根回しをする支店長によって次々と嫌がらせを受け、ついには子会社出向という最終手段が!

誰の不正を暴こうが、債権を回収できなければ自分の責任は免れませんし、上司の推薦なくしては望む部署への人事異動だって難しい。果たして銀行マンとしての半沢の運命は・・。

金融犯罪が絡むような大事件は滅多に起こるものではないでしょうし、痛快すぎて嘘くさも感じますが、銀行内部のドロドロした側面には「いかにも」と思わされます。まあ、どんな組織にも「人間関係」はありますからね。そんな中で「正論」を通し切る主人公は「現代のヒーロー」的な存在かもしれません。バブル期の入行・入社組は人数も多いので、同世代での競争も大変なんでしょうが・・。

2013/4