りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2012 My Best Books

今年も最後に1年を振り返っての「ベスト本」を選んでみます。
長編小説部門(海外)

シャンタラム(グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ)

オーストラリアの監獄から脱獄してインドへと逃走した男が、ボンベイのスラムに潜伏して無資格診療所を開設し、マフィアの一員にもなり、さらにはソ連占領下のアフガニスタンでゲリラ活動に従軍するという波乱万丈の物語は、自伝的小説であるが故に圧倒的な臨場感に満ちていますが、それだけではありません。「愛の物語」であり「喪失と再生の物語」でもある本書は「奇跡の小説」なのです。

大好きなジョン・アーヴィングさんの『あの川のほとりで』や、大家バルガス=リョサの『悪い娘の悪戯』などを押さえて堂々の1位です。


長編小説部門(日本)

ソロモンの偽証(宮部みゆき

今年の1冊は文句なしに本書です。全く悩むこともありませんでした。同級生の死亡事件に端を発して混乱した学園で、自らの手で真相を明らかにするために立ち上がった中学生たちの物語です。生徒を傷つけたくないが故にかえって中途半端なまま疑心暗鬼に陥っていたんあっていたでひとりひとりの登場人物を見事に描き分けただけでなく、総体として善意も悪意も自責も昇華させてしまうような見事な展開は、もう宮部さんにしか書けないものでしょう。
第1部 事件第2部 決意第3部 法廷


短編小説部門

道化師の蝶(円城塔)

稀代の多言語作家・友幸友幸は手芸を読み解く力を持ち、作家を追うエージェントは言葉の不思議さについて語り、雇い主のエイブラムス氏はフェズ刺繍で紡がれた銀色の虫取り網で着想を捉え、捉えられた蝶は人の頭の中に入り込んで着想の卵を産む・・。「言葉」を使って文章を書くことにこだわった作品は不思議な魅力に満ちています。芥川賞受賞作です。


ノンフィクション部門

世界の99%を貧困にする経済(ジョセフ・E・スティグリッツ)

「読んでおかなければいけない本」だと思います。自由主義市場政策が生み出したものは「1%の1%による1%のための政治」であり、中流層の空洞化と極貧世帯の急増でしかなかったという、ノーベル経済学賞受賞学者による主張は説得力に満ちています。この世界をより公平で効率的な社会に転換するための最大のカギは「政策」を作り出す「政治」だと言い切るのですが・・。アメリカでは民主党政権が再選され、日本では政権交代が行われましたが、「1%の意見」に左右されない政治は実現できるのでしょうか。


今年も素晴らしい本とたくさん出合えました。
2013年もいい1年にしたいものです。家庭も、仕事も、読書も、健康も。
来年もよろしくお願いいたします。

2012/12/30