りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2012/2 シャンタラム(グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ)

波乱万丈の自伝を小説化した『シャンタラム』は、まさに奇跡の小説です。この本を今月の1位にするために、アーヴィングさんの新作を後回しにした価値は十分にありました。続編の構想もあるようですが、再び奇跡は起こるのでしょうか。

直木賞候補となった桜木紫乃さんの生み出したニュー・ヒロインには、ほれぼれとしてしまいました。
1.シャンタラム(グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ)
オーストラリアの監獄から脱獄してインドへと逃走した男が、ボンベイのスラムに潜伏して無資格診療所を開設し、マフィアの一員にもなり、さらにはソ連占領下のアフガニスタンでゲリラ活動に従軍するという波乱万丈の物語は、自伝的小説であるが故に圧倒的な臨場感に満ちていますが、それだけではありません。「愛の物語」であり「喪失と再生の物語」でもある本書は「奇跡の小説」です。

2.ミッション・ソング(ジョン・ル・カレ)
著者全盛期の『リトル・ドラマー・ガール』や『スクールボーイ閣下』を思わせる「リアリティに満ちたフィクション」は、混乱するコンゴ東部の自立を旗印にして資源目的のクーデター計画に巻き込まれた通訳の、孤独で勝ち目のない戦いの物語。各勢力に蹂躙され続け、先進諸国からは無視されているコンゴ東部の悲惨な状況が、哀しい歌に伝えられる少女の運命と重なってきます。

3.ワン・モア(桜木紫乃)
安楽死スキャンダルに巻き込まれて離島の診療所に赴任し、浮気相手とした年下の漁師の家庭を破壊しながらも平然としている37歳の女医・美和の心を動かしたのは、余命半年の宣告を受けた幼馴染みの女医・鈴音からの救難信号でした。北国の街を舞台にしてそれぞれ異なるタイプながら共に芯の強い2人の女医を中心に進んでいく連作短編集では、生と死を見つめた「おとなの関係」が描かれていきます。



2012/2/29