りぼんの読書ノート

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ソロモンの偽証 第2部(宮部みゆき)

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自殺として扱われた同級生・柏木の死亡事件に端を発してバラバラになった学校に対して、自分たちの手で事件を解決すると決意した優等生の藤野涼子が持ち掛けたのは、真相を究明するための「生徒による裁判」でした。このまま幕引きとしたい学校側は猛反対して敵に回りますが、感情的になった教師によって暴力をふるわれたことを切り札として、涼子は裁判を認めさせます。

大半の生徒は事件とその影響を自分たちの問題と捉えておらず、集まったのはたったの十数人でしたが、涼子の覚悟は揺るぎません。検事役として事件の再調査を始めた涼子は、告発された不良少年の大出も、告発状の差出人と噂された三宅も、深い悩みのまま放置されていたことに気付きます。大出は身の潔白を証明する機会を与えられず、三宅は告発の真偽を問われることもないまま、それぞれ悪意ある風評にさらされ続けていたのです。

一方、涼子と対決する役割の弁護人は意外なところから現れます。柏木の知人として他校から名乗りを上げた神原は見事な手捌きで事件のもつれた糸を解きほぐし始めるのですが、暗い過去を持つ彼にも秘密がありそうです。検事として三宅の告発状に正面から向き合い、ついに彼女を信じる決意をした涼子は、別の関係者がいるのではないかという第三の可能性に気付くのですが・・。

涼子や神原のみならず、自分自身が凶悪な犯罪を起こす寸前まで追い詰められた経験を持つ野田や、大出を愛する不良少女の勝木や、判事役を買って出た井上など、裁判準備の中でそれぞれ成長していく生徒たちが描き分けられていきます。宮部さんが「七人の侍」を例に出して「第2部が勝負所」と語った理由はよくわかります。登場人物をしっかり見せられなければ、クライマックスの戦闘シーンに興味は乗ってきませんもんね。

告発状を隠したとされた森内教諭の無実も明かされ、大出の祖母が亡くなった火事が父親も関連しての放火だったことも明るみに出され、第3部への材料は揃いました。さぁ、いよいよ最終章を待つばかりです。長い出張から戻る頃には図書館の順番が回ってくるでしょうか。

2012/12