りぼんの読書ノート

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ソロモンの偽証 第1部(宮部みゆき)

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宮部さん5年ぶりの現代ミステリです。第3部まで一気読みしたいところですが、図書館から借りて読む身ではそうそう贅沢も言えません。じっと耐えて順番を待ちましょう。

物語はクリスマスの朝、雪が降り積もった中学校の裏庭で14歳の少年の死体が発見されたことから始まります。この少年、柏木卓也は不良3人組に殴られたことから不登校となっていた生徒であったためイジメとの関連も疑われたものの、それ以降の接触もなかったことから「屋上から飛び降りての不幸な自殺」と扱われて事件は終わったかに見えました。

しかし、「柏木君は不良3人組によって屋上から突き落とされた」という目撃者を名乗る者からの匿名の告発状が出されて、状況は一変します。学校は警察と協力して慎重な捜査を行い事実無根と判断するのですが、その情報がマスコミに漏れて過剰反応を巻き起こします。そしてついに新たな犠牲者が・・。

第1部は、学校がマスコミにさらされて荒廃していくこと、真摯に問題に対応してきた校長が辞任を余儀なくされて後任者が早急な幕引きを急いでいることなどに理不尽さを感じた学級委員の藤野涼子が「大人たちには任せておけない」と自分たちの手で真相を究明しようと決意する場面で終わります。

しかし告発状の差出人で、それに協力した友人の死にも平然としている悪意の持ち主が、不良3人組のみならず優等生の藤野をも嫌悪していることを思うと、簡単に解決するどころか、関係する者たちを巻き込んで問題が大きく膨れ上がっていく悪い予感もするのです。そもそも悪意ある風評は、告発人だけでなくクラス全員がうっすらと持っていた気分から生まれ出たものとも言えますし。

次巻が待ちきれませんが、とりあえずは待つしかありません。それにしても、いつものことですが、読者をぐいぐい引き込んでいく宮部さんの筆力にもストーリー・テラーぶりにも感心するばかりです。

2012/12