りぼんの読書ノート

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リチャード三世「殺人」事件(エリザベス・ピーターズ)

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シェイクスピアフランシス・ベーコンによって、幼王を殺害して王位を簒奪した希代の悪物として描かれたヨーク朝最後の王「リチャード三世」の名誉を復権させたのは、ジョセフィン・テイによる歴史ミステリの傑作時の娘でした。彼女は、テューダー朝を開いたヘンリー七世を正当化するために、ボズワースの戦いで戦死したリチャード三世は貶められたと推理したのです。

本書は『時の娘』へのオマージュ的な作品ですね。
リチャード三世を熱烈に擁護する「リカーディアン」と呼ばれるグループに、彼の無実を証明する歴史的資料が届けられたところから物語が始まるのですが、それをマスコミに披露する会場を、それぞれ当時の人物に扮したコスプレ・パーティにするというのですから、念の入ったもの。

ところがそこで次々と事件が起こるのです。ヨーク朝末期の薔薇戦争当時の人々はそれぞれ尋常ではない死に方をしているのですが、それに見立てた形で集まった人々に災難が降りかかります。殴られたり、毒物を盛られたり、ワイン樽につっこまれたり、ハンカチで鼻をふさがれたり・・。

果たして誰がどんな意図で行っているのでしょうか。そしてリチャード三世に扮した主催者には、どんな災難が降りかかるのでしょうか。友人に誘われてたまたまパーティに参加した主人公の女性ジャクリーンは、謎を解き明かすことができるのでしょうか。

謎解き部分はミステリ・ファンには物足りないかもしれません。まあ、歴史ミステリへのオマージュということで、意匠を楽しめば良いのでしょう。

2012/12