りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

家族熱(向田邦子)

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『思い出トランプ』に始まる一連の向田邦子名の小説は、放送台本を諸田玲子さんがノベライズしたとのことで、さすがに通常のノベライズ小説よりも優れています。本書もそのシリーズの一作。向田邦子さんが作成したドラマも見たことはなく、小説も初めて読んだのですが、かなりドロドロの作品ですね。

主人公の朋子は、年の離れた男性のもとに後妻に入って13年間努めてきた女性。当時は少年だった夫の連れ子たちは成人し、朋子になついていた長男は医者に、朋子にずっと反感を抱いていた次男はプ-になっています。

全てが順風満帆とはいかないものの主婦としての幸せも感じるようになってきた朋子に、ショッキングな出来事が知らされます。13年前、幼かった長女の死をきっかけに家を出た先妻が東京に戻ってきて、夫と密かに会っているというのです。

実は建設会社部長の夫は、バーの経営者となっていた先妻の店に出入りする官庁職員の情報を入手して、贈賄そ仕掛けようとしていたのですが、それだって許せないことですよね。朋子は家を出る決意をするのですが、朋子を失った「家庭」はバラバラになっていきます。

この後、家族の愛憎とエゴがたっぷりと描かれていくのですが、舅の再婚話、贈収賄の露見、先妻の心の病、朋子の妊娠などの出来事が容赦なく続くのには、もうお腹いっぱい。こういうドラマは今時流行らないだろうなぁ・・と思えるのですが、韓流ドラマが流行しているということは、そうでもないのでしょうか。

ただ、「先妻が使っていた瀬戸物を壊してとり変えるのに13年かかった」とか、「今まで6切れ買っていた魚が突然1切れになる夕方の買い物時間が危ない」などの微妙な表現に、向田さんの凄みを感じました。それとも意地の悪さでしょうか・・。

2012/12