りぼんの読書ノート

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十二国記 ②風の海 迷宮の岸(小野不由美)

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シリーズ第2部は、いったん陽子の物語から離れて数年前に遡ります。
神託を受けて王を選びお仕えする神獣である麒麟は、金の果実として蓬山の木に実ります。母親代わりとなって麒麟の傍をかたときも離れず守りつづけるのは半獣の女怪であり、成人の日まで世話をするのは泰山の女仙たち。

戴国の王を選ぶために生まれるはずだった泰麒の実が、蓬山を襲った蝕によって異国へと流されてしまったところから本書の物語が始まります。それから10年、蓬莱で「人」として生まれ育っていた泰麒はようやく見つけ出されて連れ戻されるのですが、麒麟の何たるかも知らず、麒麟に姿を変える転変の術さえ持たぬ少年はとまどうばかり。

幼ない少年は悩み苦しみます。自分に麒麟たる資格はあるのか。王を選ぶ天啓などを得ることがあるのか。人間界で誰からも愛されなかった少年には自分が何も変わっていないように思えるのですが、やはり「その時」は来るんですね。スーパー級の怪異と対峙して守るべきものを見出したときに、ついに秘められていた能力が発揮されるのですが・・。

本書のもうひとつのポイントは「天啓とは何か」ということにあります。それは理屈ではなく、強いて言えば直感的なもののようですが、それが真の天啓なのかどうか、証明などできるものではないのです。そんな中で重い決断を強いられるというのは辛いな。果たして泰麒の決断とは・・。

前巻に登場した慶国の麒麟・景麒も登場しますが、これは陽子と運命の出会いを果たす前のことですね。やはり景麒は堅苦しくて口数も少なく、説明が苦手な男だったんだ。陽子や泰麒の「その後」が語られる続編もあるとのこと。「成長は一巻にしては成らず」というところでしょうか。

2012/12