りぼんの読書ノート

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魔性の子(小野不由美)

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十二国記シリーズ」の黄昏の岸 暁の天を現実の日本側から見た物語は、ホラー色が強くなっています。

高校2年生の高里要には、10歳の頃に神隠しにあって1年間行方不明だったという過去がありました。実はその間、彼の本来の姿である泰王の麒麟、すなわち泰麒として活躍していたのですが、鳴蝕によって日本に戻ってきた時にはその間の記憶は失われていました。

しかし、現実世界の日本に戻ってきた高里はひとりではありませんでした。異世界で泰麒の使令であった女怪・白汕子と妖魔・傲濫がついてきていたのです。彼らの使命は泰麒を守ることなのですが、ついにこの世界の善悪を理解することなく、高里に攻撃を仕掛けたと思える相手に報復をしてしまうんですね。

高里は「祟り」ともたらす「魔性の子」として家族や同級生から忌み嫌われ、敬遠されてしまいます。そして妖魔たちの報復はエスカレートしていき、ついに暴走を始めてしまいます。果たして廉麟たちの泰麒の捜索は間に合うのでしょうか。現代日本に現れる廉麟たちの姿も相当に怖いのですが・・。

本書は、別世界に憧れる教育実習生の広瀬からの視点で描かれた結果、単なる「裏返しのファンタジー」を超えて、現実世界からの疎外感を持つ者どうしの心理的な交流と葛藤という文学的な色彩も強くなっています。でも本書を独立した作品として読んでしまっては、何だかわかりませんね。やはりシリーズの番外編として位置づけたほうが良さそうです。

2012/12